ONCE ダブリンの街角で
DVDが発売されてだいぶ経っていて,貸してもらっていたのをようやく見ることができました.
主演のグレン・ハンサードはアイリッシュ訛りがあまりないけど,体格や表情なんかはアイリッシュ特有だし,マルケタ・イルグロヴァは東欧チェコの美しさがそのままスクリーンにでてきてすばらしかった.DVDに付いていたインタービューを見ると当時17歳というのにさらに吃驚!彼女の大人びた顔は日本の若手の女優さんには無いものを感じました.二人とも俳優ではなく音楽家ではありますが.
アイルランドといえば,ギネス,アイリッシュパブ,アイリッシュダンス,羊にアランセータくらいしかイメージを持たないであろう日本人にとって,これらが一切出てこないこの映画は多分アイルランドではなく,ヨーロッパのとある場所くらいしか思い出さないだろう.
ダブリンに行った事のある人であれば,グラフトン通りやリフィー川,さらには海岸などは懐かしさを感じるでしょう.
全篇を通しての音楽もさることながら,二人がバイクでドライブしたときの会話がとても印象的.
マルケタに向かって,グレンがMiluješ ho ? (Do you love him?)とチェコ語で尋ね,
マルケタがチェコ語でMiluji těと答える.
グレンが英語では何て言うの?という問いに無言のシーン.
DVDの字幕ではグレンが尋ねるところには字幕(彼が好きなの?)が入るけど,マルケタがチェコ語で答えたところには字幕が入っていません.これ演出なんでしょうね.
グレンの優しさや弱さはアイリッシュ特有のエッセンスが入っているし、マルケタの凛とした感じは東欧人を感じます.女役は最初アイリッシュを考えていたということでしたが,これは正解だろうな.
さらにONCEというタイトルは,始めは「一度だけ」彼らがキスをするという構想だったようですが,グレンとマルケタが反対をしてタイトルだけ残ったというエピソードがDVDのメイキングに載っていました.
実生活でも彼らは一緒にバンドを組んでいたり(つきあっていたらしいです),ドキュメンタリーという感想を持つくらいの映画なので,キスシーンが無くなりお互いの恋愛を抱えながら音楽を通して友情を築いた構成は観客を揺さぶり続けるのだと思いました.
大感動,ハッピーエンド,バッッドエンドというわけでもなく,物語,音楽や映像もシンプルです.エンディングも「え?これでいいの?」なんですが,心にちょっとだけ引っかかる日常を描いた作品です.だがそこがいい.
音楽は特によいです.今度チェックしようっと.
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