唯川恵「シフォンの風」
気持ちが落ち込みがちな時,恋愛小説が読みたいと図書館で手にとってみた.
舞台は金沢,大学を卒業してOL3年が経った佐和の日々の仕事の葛藤や恋愛の物語.
会社の同僚で彼氏の邦夫の友人であり佐和の元カレであった暁との再会.
彼がでてきてから,話は3人が中心になって揺れ動く佐和の心…かと思いきや,そうはならずに邦夫に焦がれる友実子の存在が昔の佐和と重なりあっていて….
本作品も作者の定番のスタイルであるのだけど,良い意味で安心して恋愛小説を読める作品だと思います.安心して読めるっていうか,恋愛小説を読んで感じる心の揺れ幅がわかる(よめる)っていうのが好きで,ラストは必ずヒロインが前向きに進むというところで終わるのがまたよい.
揺れ幅が許容以上だと感動はするもののその反動が大きいものです.作者の作品は何気ないOL(死語かも)の日常を綴っていて,婚活などと言われているいまだからこそ,読み返すべきなのかも.
解説の江國さんの言葉がすべてを言い尽くしている.
金沢の町のやわらかい空気を背景に,唯川さんは,一人の女性と彼女をめぐる風景の一つ一つを,あっさりと歯切れのよく物語に仕立てる.この,あっさりと,が,唯川さんの唯川さんたる所以なのだろう.全然おしつけがましくないのだ.かろやかで,甘みも上品.それこそシフォンケーキのように.そうだ,彼女の作品には必ず食べ物がでてくる.主に仕事帰りの飲み屋だったりレストランだったりするわけだが.金沢という舞台がまた食べ物を引き立たせているなと思った.
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