安達千夏「モルヒネ」
複数の作家が書いた短編集を読んで、なんとなくフィーリングがあいそうかなと思って購入しました。
余命いくばくもない元恋人との再会をしたホスピス医師、藤原真紀の心情を書くということなのですが、主題に相当するものが多い作品でした。
恋愛小説と謳っていますが…うーん、作品のベースにある在宅医療、緩和ケアというものが作品全体を覆っています。さらに真紀のトラウマとも言うべき幼少期の出来事からはじまるこの作品は医師となった理由というか真紀の生死感が読者に取り付いてきます。
大変重いテーマでありながら、読み進めていけるのはストーリとして恋愛小説を成しているからなのでしょう。元恋人ヒデのと会話は付き合っていたと当時との比較をしながら進んで行きます。
タイトルにあるモルヒネは作品の中では緩和ケアのアイテムとして、そして死を選択しているヒデや死に向かい続けている真紀にとっても魅惑のアイテムとして存在します。
でも死に近づくために選んだ医師という職業というか忙しい仕事であるそのことが死へ近づくためのモルヒネになっているととらえるのは皮肉でしょうか。
切り口を変えるといろいろな読み方ができそうな作品です。
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